カエルは両生類。ヘビやトカゲは爬虫類。

では、ワニはどちらに入るのでしょうか?
実はこの素朴な疑問、動物の「分類」の本質に迫る大切なヒントが隠されています。
見た目や住んでいる場所だけでは、両生類と爬虫類の違いはわかりにくいもの。
ですが──その決定的な違いは、なんと「卵」にあるのです。
この記事では、両生類と爬虫類の特徴をくらべながら、「ワニはどっち?」という疑問にも答えていきます。
動物たちの進化と分類のヒントを、やさしく、わかりやすく解説します。
そもそも「両生類」と「爬虫類」はどう違う?
ひと目で分かる!ざっくり比較表
特徴 | 両生類 (カエル・イモリなど) |
爬虫類 (ワニ・ヘビ・トカゲなど) |
---|---|---|
皮膚 | 水分を保つやわらかい肌 うろこ無し |
厚い〈うろこ〉で守られ乾燥に強い |
呼吸のしかた | 幼生は〈エラ〉呼吸 → 成体で肺呼吸 | 生まれたときから肺呼吸のみ |
卵 | 水中に産むゼリー状の卵 殻がない |
殻のある卵(羊膜〈ようまく〉卵)を産み 陸上でも孵化できる |
生活環境 | 一生のうち水辺が必須 | 陸上生活に適応、水辺を離れてもOK |
ポイント解説:決め手は“卵”
両生類の卵はぷるんとしたゼリーに包まれており、乾燥するとすぐにダメージを受けます。
だから水中に卵を産み、水辺から離れにくいのです。
対して爬虫類の卵には硬い殻があり、中の胚〈はい〉を守る羊膜(ようまく)という膜が発達しています。
これにより卵は陸上でも乾かず、安全な場所で孵化できます。
この「羊膜卵」は、恐竜や鳥、そして哺乳類へとつながる大進化の第一歩。

「卵の殻があるかどうか」が、両生類と爬虫類を分けるもっとも分かりやすい基準なのです。
ワニが「爬虫類」である3つの理由
ワニは水辺に住み、泳ぎも得意。
ぬるっとした見た目から「両生類では?」と思われがちですが、じつはれっきとした「爬虫類」です。
その根拠となるポイントを3つに分けて解説します。
① 分厚い“うろこ”が体をおおっている
ワニの皮膚は、ごつごつとした角質のうろこでできています。
これは乾燥に強く、太陽の下でも水分を逃がさないつくり。
両生類のような「水を通す肌」ではありません。
皮膚の構造だけでも、ワニは両生類とは異なることがわかります。
② 一生、肺で呼吸している
両生類は、オタマジャクシのような幼生時代にはエラで呼吸し、成長してから肺呼吸に切り替わります。
ところがワニは、生まれたときからずっと肺呼吸です。
水に潜っているときも、肺にためた空気で息を止めているだけ。エラは一切持っていません。
③ 陸地に産む、殻のある卵
ワニの卵は固い殻で覆われた「羊膜卵(ようまくらん)」です。
水中ではなく、陸地の砂や泥に産み落とされ、日光で温められてふ化します。
これも、柔らかいゼリー状の卵を水中に産む両生類とは決定的に違う点です。

このように、皮膚・呼吸・卵の3つの特徴すべてが「爬虫類」の性質に当てはまっており、分類上もワニは爬虫綱(はちゅうこう)ワニ目に属しています。
ではなぜ「ワニは両生類?」と混同されるのか?
「ワニって両生類じゃないの?」と思ってしまう人が多いのには、いくつかの理由があります。
特に、水の中で生活している姿が、カエルやイモリと重なって見えるからです。
水辺にいる=両生類、というイメージ
両生類の代表といえばカエル。池や川にすんでいる姿はよく知られています。
ワニも同じように水辺でくらしているため、「水にいる=両生類」というイメージと重なって、混同されがちです。
ヌルッとした質感?実は全然ちがう!
ワニの体はツヤのあるうろこでおおわれていますが、ぱっと見では「ぬるぬるしてそう」と思われることもあります。
これは、カエルのような水を通す皮膚と混同されていることが多いですが、実際には水をはじく乾いたうろこなのです。
見た目で判断するとまちがいやすい
動物の分類は、見た目や住んでいる場所ではなく、体のつくりや進化の系統によって決まります。
「水の中にいるから両生類」ではなく、「どんな卵を産むのか」「どのように呼吸するのか」が、大事な分類のポイントなのです。
ワニはどんな仲間?──「爬虫綱・ワニ目」の世界
ワニは「爬虫綱(はちゅうこう)」という大きなグループの中の、「ワニ目(もく)」に分類されます。
このワニ目には、ナイルワニ、アリゲーター、クロコダイル、そしてくちばしの長いガビアルなどが含まれています。
ワニの仲間は意外と少数派?
実は、ワニ目に属する動物はとても種類が少なく、現存するのは30種ほどしかいません。
けれどその一方で、ワニたちは2億年以上前から地球にすんでいた、とても古い仲間なのです。
恐竜の時代から生きてきた“生きた化石”
ワニは、かつて地球を支配していた恐竜と、共通の祖先を持っています。
そして現代では、鳥類とも進化上のつながりがあることがわかっており、ワニ・恐竜・鳥は「主竜類(しゅりゅうるい)」というグループに含まれます。

つまりワニは、「恐竜のいとこ」のような存在であり、その体のつくりは進化の“なごり”を今もとどめているのです。
強そうだけど、じつは繊細な一面も?
ワニの皮膚は硬そうに見えますが、口まわりにはとても敏感な神経が集まっており、水の中の振動をキャッチする能力にすぐれています。
また、子どもを守る母ワニは、ふ化した赤ちゃんを口の中にそっとくわえて、安全な場所へ運ぶという行動でも知られています。

いかつい見た目とは裏腹に、親子のつながりを大切にする一面があるのです。
まとめ:ワニは爬虫類。その理由は「卵」にあり!
ワニは、両生類ではなく爬虫類です。
その決め手は「卵のつくり」と「呼吸のしかた」。
見た目や住む場所ではなく、体のしくみが分類のポイントになります。
- 爬虫類(ワニ・ヘビ・トカゲなど) → 固い殻のある卵(羊膜卵)を産み、乾燥にも強い。生まれたときから肺呼吸。
- 両生類(カエル・イモリなど) → 水中にゼリー状の卵を産み、幼生期はエラ呼吸。乾燥に弱く、水辺が必要。
ワニは、陸上でもふ化できる“防水の卵”をもち、うろこに覆われた体で長い進化の旅を生き抜いてきました。
恐竜時代を生きのびた主竜類の仲間として、そして赤ちゃんを口にくわえて守る意外にやさしい一面をもつ生き物として──その姿は、分類を超えた魅力に満ちています。
「卵ひとつで、生き物の未来が変わる」
そんな生物学の奥深さを、ワニは静かに教えてくれているのかもしれません。