冷凍庫にゼリーを入れてみたことはありますか?
「夏だから、ゼリーを凍らせてシャーベットみたいに食べたい!」と思って冷やしたのに、いつまでたってもプルプルのまま…そんな経験がある方もいるかもしれません。
実は、ゼリーが凍りにくいのは、水とはちがって、ゼリーの中では「水分が凍る条件がそろっていない」からなんです。
この不思議な現象の裏には、科学的な4つの理由があります。
本記事では、それぞれの理由をわかりやすく解説していきます。

食べ物の科学って、意外と奥が深いんです。ゼリーが凍らないナゾを、いっしょに解き明かしていきましょう!
ゼリーが凍らない理由①:ゼリーには“甘さ”があるから凍りにくい──凝固点降下って?
水は0℃で凍るけれど…?
ふつう、水は0℃になると凍ります。これは「凝固点(ぎょうこてん)」といって、水が氷になる温度のことです。
ゼリーには、甘さや成分がたっぷり
でも、ゼリーはふつうの水ではありません。
ゼリーには、砂糖やゼラチンなどの成分がたっぷりと入っています。

砂糖やゼラチンなどの成分(不純物)が水に溶け込むと、「水の凝固点」が下がるという現象が起こります。
これが「凝固点降下」
この現象は、科学では「凝固点降下(ぎょうこてんこうか)」と呼ばれています。
つまり、何かが水に溶けていると、その水は0℃では凍らなくなってしまうのです。
砂糖水もゼリーも、凍りにくい
たとえば、砂糖をたくさん入れた水(砂糖水)は、−2℃や−4℃くらいまで冷やさないと凍らないことがあります。

ゼリーの場合、砂糖に加えてゼラチンや香料などの成分も多く含まれているので、−6℃以下でやっと凍るということもあるのです。
冷凍庫の温度でも凍らないことがある
家庭用の冷凍庫の温度はだいたい−18℃前後ですが、ゼリーの種類や入れ方によっては中心まで十分に冷えず、 結果として凍らないように見えることもあります。
「甘いから凍らない」は、正しい理由
つまり、「ゼリーは甘いから凍らない」というのは、実は科学的に正しい理由なんです。
ゼリーが凍らない理由②:水分が“閉じ込められている”から──ゲル構造が凍りをじゃまする?
ゼリーの正体は「ゲル」だった!
ゼリーのプルプルした食感は、どうして生まれるのでしょう?それは、ゼリーが「ゲル」という特別な構造になっているからです。

ゲルとは、ゼラチンや寒天などの成分が水を包み込むようにして、網目状の立体的なネットワークを作っている状態のことをいいます。
このネットワークの中に水分が閉じ込められているため、水が自由に動けなくなっているのです。
水分子が動けない=氷になりにくい
水が氷になるときには、水分子が規則正しく並んで「結晶(けっしょう)」を作る必要があります
でも、ゼリーの中の水はゲル構造の中で動きにくいため、氷の結晶ができにくくなります。

これが、ゼリーが凍りにくい理由の2つ目。つまり「水分が自由に動けない=凍りにくい」というわけです。
ゼリーが凍っても、カチカチじゃない
ゼリーを冷凍してみて、もし凍ったとしても、それはふつうの氷のようにカチカチではありません。
多くの場合、「シャリシャリ」「ボソボソ」したり、水とゼラチンが分離して食感が変わってしまいます。
これは、ゲル構造がこわれてしまったり、水分がうまく凍らなかったりするためです。
つまり、ゼリーが凍りにくいのは、甘さ(凝固点降下)だけでなく、「構造のちがい」も大きなポイントなんですね。
ゼリーが凍らない理由③:過冷却ってなに?ゼリーが“凍りそうで凍らない”ヒミツ
水は0℃で凍るとは限らない!?
水は0℃になると凍る、とよく言われますが、じつは必ずしもそうとは限りません。
きれいな水を静かに冷やしていくと、0℃を下回っても凍らないことがあります。
この現象を「過冷却(かれいきゃく)」といいます。
過冷却の状態では、水は「そろそろ凍りたい…」と思っているのに、氷のもと(結晶核)がないために凍るタイミングを失っている状態です。
ゼリーでも過冷却は起こるの?
「過冷却は純水でしか起こらない」と思われがちですが、実はゼリーのような食品でも条件がそろえば起こりうるとされています。
ゼリーの中では、ゲル構造によって水分が閉じ込められ、氷のもとになる「結晶核」ができにくくなっています。
そのため、冷凍庫で冷やしても凍らずに、過冷却の状態になることがあるのです。
ちょっと触ったら一気に凍った!?
もし冷凍庫に入れておいたゼリーが、いつまでも液体のままで、「容器をちょっとゆすったら急に凍り始めた!」という経験をしたことはありませんか?
それは過冷却が破れて、急に氷の結晶ができ始めたサインです。
ただし、いつでも起こるわけではない

過冷却はとても不安定な現象なので、ゼリーを冷凍すれば必ず起こるというわけではありません。
また、ゼリーが凍りにくい主な理由は「凝固点が下がっていること」や「ゲル構造による水分の制限」であり、過冷却はそれらと組み合わさって起きる“補助的な要因”と考えられます。
それでも、身近なゼリーで過冷却を観察できるかもしれないというのは、とても面白い科学の一面ですね。
ゼリーが凍らない理由④:冷気がムラになると、ゼリーはうまく凍らない?
冷凍庫の中、どこでも同じ温度じゃない!
家庭用の冷凍庫は、たいてい−18℃くらいに設定されています。
でも、冷凍庫の中すべてがピッタリ同じ温度になっているわけではありません。
ドアに近い場所や、奥のすき間、ものがたくさん詰まっているときなど、場所によって温度に差ができることがあります。
これを「温度ムラ」といいます。
ゼリーの大きさや容器によっても変わる
ゼリーが入っている容器の大きさや厚さも、冷え方に影響します。
小さなカップのゼリーならすぐに全体が冷えますが、大きな容器に入ったゼリーは、中心まで冷気が届くのに時間がかかることがあります。
また、ガラスやプラスチックの容器は、冷たさを伝えにくいこともあるため、凍りにくく感じる原因になります。
ゼリーの性質だけじゃない。環境も大事!
ここまで紹介してきた「甘さ」「ゲル構造」「過冷却」は、ゼリーそのものの性質に関係する理由でした。
それに対して、この「冷気のムラ」はゼリー以外の“環境”による要因です。

つまり、「ゼリーが凍らない」と感じたときは、ゼリーのせいだけでなく、冷凍庫の使い方や配置にも目を向けてみるといいかもしれませんね。
まとめ
ゼリーがなかなか凍らないのは、ただの不思議ではなく、科学的なしくみが関係していたのです。
主な理由は以下の4つです。
1.凝固点降下
甘い成分やゼラチンなどの溶けているものが、水の凍る温度を下げています。だから、0℃以下になってもすぐには凍りません。
2.ゲル構造
ゼリーの中では、水分がゼラチンの網の目に閉じ込められています。
そのため、水分子が自由に動いて氷の結晶を作りにくくなっています。
3.過冷却
ゼリーのゲル構造が氷の結晶ができにくくするため、条件がそろうと、凍る温度より低くなっても液体の状態を保つことがあります。
これが「凍りそうで凍らない」過冷却現象です。
4.冷気のムラ
冷凍庫の中は場所によって温度が違うことがあります。
冷気がうまく当たらない場所にあると、設定温度まで冷え込まず、凍りにくいと感じることがあります。
食べ物の不思議には、科学がいっぱい!
何気なく食べているゼリーにも、こんなにたくさんの科学の要素がつまっているんですね。
「どうしてこうなるんだろう?」という身近な疑問から、科学の世界をのぞいてみると、毎日がちょっと楽しくなります。
これから冷凍庫にゼリーを入れるときは、今日知った4つの理由を思い出してみてくださいね。